が蔵瀬にたのんだのであろう。私はたしかに、この庇護者があったばかりに、転校の当初、さびしい思いをすることがなかった。しかし、蔵瀬が、志願して水兵になって、海軍に入ったのを、私はどんなに悲しく思ったかがわからない。海軍に入って、何年かのあいだ、私たちは、絶えず交通していた。軍服をつけて、一度、帰ってきたが、その後は、ずっと帰ってこなかった。
蔵瀬と明らかに暴力支配の少年ボスの一人であった。けれども彼は、善良、温厚で、その行動は
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