少年たちは、自から彼に恐れをなしたのであった。彼はすでに小学校を出ていたが、就職するでもなく、上級の学校に行くでもなかった。その彼が中学校のグラウンドに、づかづかと眉をいからして、はいりこんでくると、少年たちは、みな小さくなって、彼のなすところを見守っていた。彼は私のそばにきて、やさしく何か、一こと二こと話して出ていくのが、常であった。私は虎の衣をかりた狐のように、大きな 気持ちになることができた。転校当時の私の孤独、不安をおもんぱかって、つてを尋ねて母
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