模灘のかなたに富士をのぞむ、この百畳敷の大広間で、諸君の門出を祝するは、言にもいった、百畳敷という言葉が、紛糾の糸口であった。建部先生は、私の祝辞が終わるとすぐに立ち上がって、「鈴木は、いま百畳敷といったが、正確には、八十畳しかないのではないか」と。ほかに何かいはれたとは思うが、正確には、八十畳しかないものを、百畳敷といったのは、実証的でない、としきりにいわれた。この岩本樓の広告の紙や、案内の紙に、百畳敷と書いてあるから、それをそのまま確かめもしないで、百畳敷といったのであるが、それを不正確
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