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私らの年代以後の者は、習学のため、都市に移り住み、その後は、習学を終わっても、生家に帰ることなく、職場を追って点々として、都市を巡り渡るのが、一般の例である。そんな傾向が顕著になったのは、いつのころからであるか。私らの年代以前の者にも、この傾向が、いくらかは存していたことはたしかである。

 今日の日本人の心においては、郷里は記憶に残っている、最初の生活の土地というべきであろう。その意味での郷里は、こののと、人間の生活がどんなに落ちつきのないものになろうとも、誰でもが、一様に持ちうる郷里というものはある。その意味での郷里は、兄弟姉妹一人ひとり異なっている場合が、多いであろう。またその意味での、私の

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