記憶に残っている最も古い生活のあったところが、郷里と考えられる場合が多いのであろうが、それは具体的には、住居とそこを中心として経験した、ごく狭い地域内の自然と人生であろう。
今では、日本人の生活には、一生の間に、いくども居住する聚落を変えるのみならず、同一の集落内においても、その住宅の場所を変えている。生れて行く兄弟は、みな別に異なった郷里の意識をもっている。
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