top of page

達は着慣れぬ紋服⁽⁵⁾を窮屈そうに着ていた。出征兵を取り囲む様にその家族たちが、左右前後について、みな波止場の方に歩いて行った。軍用船の出帆は午後であったが、もう朝からそんな人々の一段が、次から次に通って行った。波止場にむかう道は、一節道であったから、私らは、家の前を通る彼らの一団を、ことごとく見ることができた。私らは、じっとして家の内に座して、彼らの通り行くのを見たのではなく、私ら自身も、何度、波止場まで行ったり来たりしたか分からぬ。波止場などは、家の前を通る彼らの一団をことごとく見ることができた。私らは、じっと家の内に坐して彼らの通り行くのを見たのではなく、私ら自身も、なんど波止場まで行ったり来たりしたかわからぬ。波止場
bottom of page