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に着いた彼等は、その付近の適当なところを探し出して、一人の出征兵士を囲む一団ごとに、思い思いにたむろして、弁当開きをしたり、話しあったりしているのであった。多くは、波止場の背後の松が、まばらに生えている草山の岡の中に、円座していた。私らは、そんなところも歩き回り、この不思議な人出を見て回った。どんな小さなできごとも見逃すまいと、視察し、それを家に帰って母に報告した。

 正午近くになってから集まってきた人々の中には、嗚咽しながら歩いてくる人が多くなった。時間がたつにつれてそんな人が多くなり、出征兵自身が泣いている一団もあれば、その家族の中の母や妹らしい人が泣いているものもあった。女達が真赤に泣きはらした眼をしてくる一団は少なくなかった。恥も外聞も忘れて泣きわめ

​日露戦争の思い出1

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