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いうわけではなかった。よい風が吹いて来たり、また止んだりするので、凧の操作は楽ではなかった。当時、私らがあげていた凧は、長崎凧⁽²⁾というので、豊橋あたりで見るような、じっと空中に固定している凧ではなかった。長崎の凧は、操作が容易でないだけに、それだけ興味も深いものであった。空中を自由自在に動かすことのできる凧であった。だから凧の糸を空中で切断しあう凧合戦の競技があった。私は一人で無心に凧の操作に興していた。
どうしたはずみであったか、私は凧の糸をツヅジの枝にからましてしまった。糸をはずすために、ツツジの株に近づこうとしても、一つ
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