top of page
IMG_0287.jpeg

けれども寮生活の中に、次のようなことを経験したことがある。ある日の夜、門限に近いころ、同室の仏法〔フランス法学?〕のKという友人と散歩してから、外から帰って、私らの面寮の玄関にきて、下駄とスリッパを代えようとしたとき、下駄箱の前に、胸倉を押し付けられている人と、押しつけて、右の手の拳を握りしめている人とを見つけて、びっくりした。押しつけられている人は、意外にも、寮の総代会の議長であり、押しつけているのは、柔道の選手として知られていた、Xという評判の男であった。

私らが見ている前で、あるいはむしろ見せるためにか、その暴力者は、二つ三つ議長の顔に鉄拳の雨をふらした。そしてその暴力者はいった。「だまっていれば、よい気になって、勝手なまねをする。」うたれながら、蒼白の顔をして、議長は叫んだ。「殺されても、私の信念は変わりません。」

​暴力支配者の思い出

​P95

bottom of page