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私らも、良きにつけ悪しきにつけ喜作さんの家に立ちよっていたようである。私の家の繁栄を、他のどの家よりよろこんでくれる家、私の家のかなしみを、どこよりも悲しんでくれる家だということを、私たちは思い込んでいた。
私の家の仏壇の下の戸棚の中に、船箪笥という古風な頑丈な金庫⁽³⁾があった。これはどこでも、旧幕時代の千石船には、みな備えてあった、木造の金庫であるらしい。恐ろしく仰々しく鉄の金具で飾られてあった。私の家にあったのと同一形式のものを、私は戦争直前、大阪の古直具屋で見たことがある。大阪あたりで製造され
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