丁字屋
私の四代前の先祖にあたる人が本家から分家して、私の家をはじめて作った人である。本家の東隣りに家をたてたから、東という家号で呼ばれていた。本家は代々、千石船の運送業や鯨取りの網元をしていた浦人であった。私の家の始祖は東隣に分家はしても、長い間、本家の目付役⁽¹⁾のようなことをしていたらしい。けれども晩年には本家とは別に千石船を造って運送業をしていた。運送業といっても、むしろ商売が主であった
祖母の事
丁字屋の事
干潟の貝とり
P113
【注釈】
1)目付人:幕府や藩の役人や武士を監視し、適切な運営が行われているかを確認する人。