漫画や冗談には無関心であるが、礼儀には、格別、注意深いのが八幡宮の風習である。妻の兄と一緒に見知らぬ町や村を歩いたことがあるが、行きずりの人に煙草屋はどこかと尋ねるのに、うやうやしく帽子をとり「ちょっとお尋ねしたいことがありますが」と言えば、相手は急ぎの用も手を安め、「お尋ねになることは何でしょうか」と。田舎道なら、手拭の頬かぶりをとり、町ならば帽子をとり、静かに問い返すのが常である。「あの煙草屋はどこにありましょうか」といえば「何か
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