ほんのわずかのあいだ、私らの舟と平行して進んだが、すぐ私らの舟を追い越して、私らの舟の前を横切って、港内の左の方の入江に向って行った。久田とその部落の人たちだったのである。
私が再びあの娘を見たことが無いのは当然である。だが四十年も前に、それもほんの一瞬間見た、あの娘の美しさは今も忘れえない。
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