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IMG_0181民族の前哨 42 .JPG

 民俗の前哨

 日本海海戦の時⁽¹⁾には、私は壱岐に住んでいたが、たしか高等小学校の一年であった。私は大砲の音が気味が悪いので、裁縫をしていた母の傍からはなれなかった。大砲の音は障子のガラスをビリビリ震はしていた。母は裁縫をしながら、昔、蒙古軍に壱岐が占領された時の話をした。そのときには、この島は、たった3人生き残っただけで、あとのものは、殺されるか、船べりにぶらさげられて、博多に連れて行かれた。両手の掌を、ふなべりに釘づけにされてぶらさげられたと

​民族の前哨

​P42

【注釈】

1)日本海海戦:日露戦争中に行われた海戦。日本海軍が勝利し、海上の制海権を確保した。日本海海戦は、日本が近代的な海軍力を持つ国家として国際社会に認識されるきっかけとなった。

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