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父36.JPG

父が通訳をたのまれて行った、と母はそれを誇りにして、話していた。碁がとても上手だったとか、打網の名手だったとか、書が勝れていたので、どこどこの看板は、父が書いたのだとか、母はまったく父を敬服し切っていた。父は鄙⁽⁵⁾には珍しい、無上美男でもあった。父が母とともに住んでいたのは、精に十年足らずであったのである。私の姉と兄は、ともに顔立ちが、父によく似ているが、心や態度は、はるかに私が、父に似ていると、祖母や母がいっていた。

​父(私の父と妻の父)2

​P36

【注釈】

5)鄙(ひな):田舎や地方、つまり年に対して相対的に遠い、または発展していない地域を指す。「鄙びる」(ひなびる)という言葉もあり、古びた田舎の風情を表現するさいに使われる。

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