もあるが、もっと強く私の心に迫る力をもったのは、全体からうける、綺麗な清潔感であった。服装の好みは、地味な、落ち着いた、それでいてきりっとした上品さのあるもので、髪はたしか桃われであったと思う。ちょっとの隙もない、その服装は、彼女の端正な顔に、よく調和していた。年齢は、二十にはまだ達していなかったのかも知れぬ風に見えた。彼女の右に座していた父も、全く同様な感じの顔をした、同様に清 潔な貴品の高い感じの、五十あまりの紳士であった。
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