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になってから、手袋がどうしても見つからぬことに気づき、母があわてて、新しいのを店屋に買いに行くことも、よくありましたが、夏に冬の手袋は、店屋にも、そこらここらには見当たらず、それを何とかたのみ込んで、母が大人の手袋をやっとさがし出してもらってきたことも、よくありました。小さな田舎の雑貨屋に、夏の手袋があるはずはなく、子どもの冬の手袋があったのは、大出来でした。
手袋をはめて登校することの不自然と不体裁は、手掌が長ずるとともに、増して行くばかりでありましたが、そのことを、私自身のように、切実に知り感じとるのは、やはり私次第にはない、と思う心が、だんだん私の心の内に芽生えてきたのです。母は私の右の手のことについては、敏感す
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