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手袋19.JPG

るようです。けれども、尋常小学校、高等小学校を通じて、ずいぶんたくさんの先生たちが、この不憫な生徒を、教壇の上から眺めたるでありましょうが、この不憫な少年だけには、左の手を差し出すことを、例外として許すと、その特別の計らいをしてくれた先生は、ついには一人もありませんでした。あるいは、そんな特別の取り扱いが、かえって何かの刺戟になることを、おそれたためかもしれません。

 夏の暑い日に、冬の手袋(子供のために、夏の手袋が、田舎の店にあろうはずはなかった)をはめて、一日、骨折りで過ごした日に、家に帰ると、払いのけるように、それをぬぎすてて、やれやれとした心地となり、ぬぎすてた手袋は、あたりかまわず、ほっぽりだしてしまうことが、よくあったのです。朝、登校のまぎわ

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