壇も武者人形も年中行事や民間信仰の教々に心をうごかす、隙もなかったのであろう。西洋医学と合理主義は、その態度に拍車をかけ、日本の村としては、珍しい尊徳教の村の精神も、それに敬意を表したであろう。家庭も新しく、家屋も新しく、唯物的な合理主義の自然科学者の哲学、資本主義上昇期の個人主義的打算主義的態度は、よってたかって、妻の生家より、日本の民家にはどこにもある伝統的な生活態度におけ る、神秘的ないっさいのものを、枯死させていたのであろう。
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