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藩土であったか、藩主とともに東北で戦っていたのかは、明らかではない。けれどもそのときの物語は、遠い他国で入婿になった、二人とも、その子孫に語りつたえることもしなかったであろう。同じ大きな運命に導かれていた二人とも、桑名の城が焼け落ちたことになったそのときからずっと、同じように進んで行ったのであろう。
私は桑名の藩城のことを、憶い出すときほど、私と妻の宿命的な親近感を、感ずるときはない。けれども私と妻も、第二次大戦⁽⁶⁾で、長男を失ったときまでは、皇軍に対しては、忠誠すぎるほどの考えを、もっていた。そんな心の反省を経験するのも、二人とも通の宿命である。
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