私の郷里
「あなたの御郷里⁽¹⁾はどこですか」と尋ねられたとき、私は即座に返事したことがない。私は色々の関係から、色々のところに郷里のような結びつきをもっているからである。
私が生まれたところは、壱岐の島の郷之浦という小さな港町である。そこで母と祖母の手によって、十歳まで育てられ、十才のころ、一家をあげて対馬の厳原という城下町に移住した。そこの中学校を卒業するまで、私はそこを本拠として生活した。
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【注釈】
1)御郷里:故郷のこと。自分が生まれ育った場所、または出身地。